もう二度と、生き抜くことは無いでしょう
麗しく爛れる月の絶叫
それが最後の命令ですか
呼吸の終わりに愛を告ぐ
拝啓、空に煮えた魔女。
落雷に焦がれた赤い鳩が美しい

こうして夜が滅びても
逝かせない
推し量った殺戮
命題の病める王
戯れに命
神の戯曲

撫でた指に一口の苺ジャム
切腹と介錯の隙間
後悔なら先にしておいた
凍りつく春にクチナシの饒舌
浮ついた袖口から零れた花嫁の吐息

迸る芳香に食べられたお墓
祈るだけなら好きなだけどうぞ
ただ見詰めることが唯一の手段というなら
暖かいはずの暖炉から雪が
甘いはずのスープから涙が
こうやって生きたのですよ、と、母が語る父を信じていた
此処が何処なのか知る者はいない
また会える日まで、と、手を振った君に天使は微笑まなかった

百七歳の野望
憧憬が望む刃
否定の果てに沈黙
降り積もる愛のあかし
凍える冬に砕いた陶器を撒いて
断罪に向かう黄泉の手が綴る破壊
世界を救う前に彼女を救え
運命はこの手から滑り落ちる、残念ながら
侮蔑に備えて構えた左腕
指先から死んでいく風景

老人はイカロスを同胞と信じている
アメイジング・ラスト・ダンス・パーティ
可憐なままで灰を食べて、シンデレラ
獄中の金木犀
己の業を理解しましたか

また生きる、まだ生きる

その朱は悉く我を侮辱する
全を成すより他に無し
無花果を植えて浄化を待つ
哀婉に染まる宇宙の断片
狂った魂が三つ、終焉を探して踊る

苦労人にはたらかせた暴力
主に有るまじき混雑の構成
噛んだら最小限に血を奪う
登場人物の配色に気を使え
最悪、現状を放棄する始末
意図的な螺旋を成就する
もどかしい唄は涙声で
止まらない催眠術と目隠し
印象派の画家に蜜を与えてはならない
現実を目論む百束の象牙

彷徨う残骸
空白の心に埋め尽くせ、二千年分の強欲を
紙一重に攫われた全ての感情
寂しいのは鰐ばかりでは無く
まともに喰らった愛情が胃で暴れる
あらゆる尊厳を放棄するユダ

仮面の女に為りたいのです
懲らしめるには夏を消し去るしかない
宴には尊い伯爵の準備を

どうせ死ぬまでの命だ

リベルが荒廃する運命の世紀
愛人は鉄の靴を履かない
スカンジナビアの永久牢獄
リアルタイム・ユニバーサル
よく考えて、それから息を殺すといい

荒野まで
牡丹か百合か芍薬か
狩人の生誕を祝して
お前もアンドロジナスを魅たのか
いざ、背後に強打
染みるメンタムに屈服

吸血問題
か弱き蟻地獄の淵の為に
自慰淡々
極刑など生温い
食紅の不敬罪
軽々しく断罪してみせたら良い

きずもの
心臓破れたり
入水経路
逆さ吊りの試み
咲き乱れ散るかな
黒鳥の色目
赤ワイン裏事情
臨時の墓

七面鳥でも断末魔を知っている
理不尽な非可逆性は誰にも理解されない
食卓を逃げ惑う秒針
束の間の幸福に縋りつき永遠の苦痛を生きよ
ティーカップとキスを交わしたカルミア
ハーブティーの芳香は毒を隠す
色彩を奪う目的の色眼鏡
晩酌を司る額縁
黒衣に包まれる失意
触手の生えた兎を看取る

今知りたいのは、人間が嘘吐きになる平均年齢

斑に近い抒情詩
高度な覚醒と異常現象
暗闇に潜む透明人間

全ての人間が描いた死は全てが妄想である
昨日まで倒れていた向日葵の首が今日は落ちた
粛清に晴れの日は向かない
銃口、照らす宵の月

仮死を誘う薔薇の芳香
例に洩れず災いを呼ぶ異端
水中で呼吸することの息苦しさ
光輝く庭で見たファントム
危険物取り扱いに長けた口
その蝶は商売道具
未開の色街に踏み入れた足、溶けた
道化師を打ち損じたのは昨夜のサーカス
憂鬱な怪物は招待状を受け取った
甘美の代償は死んだ花、虫
寄宿舎の足音
仮面が舞踏する水底には鮫がいる
林檎畑の罪栽培、悪事を裁いて毒林檎