呼吸のたびにわざと大きくゆっくり息を吐いて、視界の中に白いもやをとらえる。
自分の中からこれが産み出されたんだと思うとなんだか不思議だ。
そうやって遊んでいると、いきなり首周りがふわりと温かくなった。
「雅治」
手触りの良いマフラーはほとんど黒に近い藍色で、色白の雅治によく似合った。
今は自分の首にあるそれにそっと触れながら振り向く。
彼は後ろから忍び寄るのが好きみたいで、どのくらい見上げればちょうど彼と目が合うのかもう感覚で覚えていた。
もっとも雅治はすぐにその目を逸らしてしまうのだけれど。
「またマフラーも手袋もなしか。せめてコートくらい着んしゃい」
そうやってぐっとほっぺたを挟んでくる雅治の両手にはしっかりと手袋もはめられていた。
身体のラインに沿った細身のコートとやはり指のほっそりしたグレイの手袋があつらえたようにぴったりだ。
「雅治はいいよね。着膨れしないから」
ブレザーのポケットに両手を突っ込んだままふてくされて答えると、ふわふわと白い息がまた目に留まる。
「何を気にしとるんじゃ。ぶくぶく着膨れたも可愛いと思うがのう」
「なんて言われても嫌なものは嫌なの」
「強情やの。そんなに俺にあっためて欲しいんか?」
そう言って雅治はぎゅっと抱き締めてきた。
頬と頬がくっつくと、そこだけは彼も冷たいままだった。
雅治は意外とスキンシップが激しい。
少しは慣れてきたけれど、こうやっていきなりハグされるとまだ恥ずかしさを感じる。
「お。もうあったまってきたみたいやの」
雅治の言う通り、顔も身体もぐんと熱くなった。
からかうように笑ってくるのでますます火照ってしまう。
確かにこんなことをされていたんじゃコートもマフラーも到底必要ない。
「もういいよ」
腕の中で身じろぐと雅治は「ピヨッ」と言いながら少し離れた。
それからわざわざ手袋を外してから私の手を掴む。
前になんで手袋を外すのか聞いてみたら、なんでも「直接肌に触れるのがいい」そうだ。
今まで手袋をしていたくせに雅治の手は下手すると私より冷たい。
防寒が嫌いな私と、もともと体温の低い雅治。
暖め合うことはもしかしたら必然なのかもしれない。
「あ、マフラー」
「しばらく貸しといちゃる。目印にもなるしの」
「目印?」
「んー、所有物の証?」
「物扱いはやめてくださいー」
「言葉のアヤじゃよ」
苦笑しながら雅治はそう返したけれど、不意にきゅ、とマフラーの端をひっぱられて息が少し詰まる。
たぶん結構本気だ。
雅治は普段あまり嫉妬しているようには見せないので、少し嬉しくもある。
「今日うちに来んか?」
「……それじゃお邪魔しようかな」
フ、と微笑んだ雅治の息が白く広がる。
剥き出しの首がそれに負けないくらい病的に白くて、キスされるまで見惚れていた。