「オシオキしたるって言うたのに、よう来たなあ」
くい、との首に繋がる包帯をひっぱると、が小さくうめいた。
保健室のベッドの上で、見慣れた潤んだ瞳が俺を映して揺れている。
いつでも濡れて見える唇が震えながら開かれる。
「クーちゃんが、おいでって言うから……」
「おいでって言うから、こうされるってわかってて来たって? ほんまマゾやな、お前は」
そうさせたのは俺やけど。
今度はシャツ越しの胸に巻かれた包帯の端を擦るように引く。
は面白いように甘い悲鳴をあげた。
思わず声をたてて笑ってしまう。
「……クーちゃんには逆らえへんの、知ってるくせに」
「せやなぁ。せやけどなぁ。まだ完璧やないみたいやからなぁ」
ほぼ十五年間。
生まれたときから十五年間かけて、俺はに毒を舐めさせ続けてきた。
が俺なしでは生きていけないように、俺だけいれば生きていけるように。
無垢で無色透明だったの身体と心を、長い時間を掛けて俺の色に染め上げてきた。
けれどまだだ。
あと少しではあるけれど、まだパーフェクトじゃない。
完璧になった瞬間を想像するとエクスタシーを感じてしまいそうになるが、まだ少し早い。
「なあ、ほら、俺に謝らなあかんこと、あるやろ?」
「……知らん。わからへんよ」
「ふぅん……そうか」
わかっていてしらを切っているのか。
本当にわかっていないのか。
「ふっ、ああぁっ!」
スカートを巻き込んで股を通らせた包帯を思い切り食い込ませながら引く。
はのけ反りながらいい声で鳴いた。
食い込ませた包帯の両端を緩く何度も引き合う。
は喘ぐように息を吐きながら、足首から縛り込んだ脚を愛らしくくねらせている。
「あかんなあ。わかってるのに黙ってるはあかんし、わかってないのはもっとあかん」
「やあ……、ごめんなさい、許して、クーちゃん……」
「ちゃうって、。やっぱわかっとらんな。しゃあないわ」
オシオキをやめてもらいたから許しを請うてもしょうがない。
どうやら本当にわかっていないらしいを見下ろしながら、携帯を取り出した。
「クーちゃん、なにを……」
の怯えた声をカメラのシャッター音で遮る。
全身を包帯で巻かれ、濡れた下着をさらけ出して紅潮している姿をあますことなく収める。
呆然とこっちを見ているに優しく優しく微笑みかけてやった。
「これをお友達の謙也くんに見せてやったらどう思うやろなあ」
「……!?」
赤みを帯びていたの顔がみるみる蒼白になっていく。
ちらちらと自分の痴態が収められた携帯の画面を見せてやる。
「ど、どうして……!」
「どうして、って、なあ。それならあいつもお前から離れてくやろ」
謙也は別にを好きな訳じゃない。
もちろんその逆もありえない。
ただ男の中で一番と親しいのはあいつだ。
上から潰していくのが無駄のないやり方やろ。
「そないなことしたら、クーちゃんだって……」
「俺か? 俺は別にかまへんで。お前と堕ちていけるならな」
もっとも、今も底からが堕ちてくるのを待っているようなものだけれど。
「もうお友達ごっこはしまいや。謙也くん、って呼ぶのもな」
俺の与え続けた毒はもう少しでの全てに行き届く。
俺以外の全員は他人。
そうでなきゃ完璧とは言えへんやろ。
「そん、な……」
「心配せんでええで。俺が、俺だけがいつでも傍にいてやるからな」
ぎしり、と簡単に沈むベッドに体重を掛けて言葉を失ったの頬を撫でる。
毒を塗り込むように、何度も何度も。
けれど、まだ頷くのを忘れたままのに微笑みかけるのを止めた。
「っ!」
投げ落とすように包帯に巻かれたをベッドの下に引き摺り倒す。
は短く声にならない悲鳴を上げ、血の気を失った顔で転がったままびくびくと俺を見上げた。
「今すぐ認めや。」
ベッドに腰掛け足を組み、倒れたままのに左腕を差し出す。
は相変わらず怯えたまま身じろぐだけで、俺を苛立たせた。
「早うせえや」
一言で急かすと、は身震いして動き出した。
両手両足は縛ったままだから、苦労して両膝を床に着く。
上目遣いに俺を見ながら恐る恐る左腕の包帯に口をつけるを見下ろした。
ひざまずいたまま懸命に結び目を解こうとするにぞくぞくと快感が走る。
唾液だらけになった包帯はテーピングも取れ緩まってはきたが、の舌と口だけではなかなか解けない。
「しゃあないな。手伝ったるわ」
苦しそうに包帯から唇を離してしまったの口内に、右手の指ごと引っ張られた結び目を突っ込む。
んぐぅっ、とうめきながら唾液を溢れさせるの舌の上で結び目を解いた。
「あとは自分でできるよな?」
唾液まみれのの唇を拭ってやりながら、優しくたずねる。
は亡羊とした表情でこくこくと頷いた。
解けた包帯の端を咥えては離し、少しずつ床に落としていく。
濡れた包帯が解けきってようやく左腕が全て見えた後も、はもう自分が何をすべきか理解していた。
軽く伸ばした俺の中指の先を、の舌が震えながら触れる。
三本の指を咥え込み、丹念に指先から舐めていった。
ああ、ええわ。
感じそうになった絶頂を、自ら抑え込む。
「そうや、。俺の毒手をきれいに舐めや」
は指を咥えたままこくりと頷くと、手のひらに舌を伸ばしていった。
手の甲、指と指の間、手首から肘の手前まで、包帯が巻いてあったところは全て丹念に舐めきった。
途中からは唾液だけではなく、涙も俺の毒手を濡らした。
涙を流しながら両手も使えず俺の腕を舐めるは、最高に可愛い。
「……クーちゃん、ごめんなさい。私が間違うてた。許して」
ひざまずいたまま擦り寄って懇願するの頭を両手で抱き寄せる。
毒はもう充満した頃だろう。
「ええ声で鳴けや」
の身体を抱えるようにベッドに引き上げる。
全身くまなく触れて擦って撫でて、たまらず笑いながら、少しずつ時間を掛けて包帯を暴いてやる。
のみだらな鳴き声が俺を刺激し続けた。
毒の華 cry
11.3.4
♪毒の華 / 白石蔵ノ介