目が覚めたら伊作くんに挿れられていた。
「んっ……!?」
「あ、おはよう。目が覚めた?」
目の前に迫ったその人は涼しげな笑顔で爽やかに言った。
のしかかる重み、体内には確実に異物感があって、溶けそうに熱い。
ここはどこで、なぜこんなことになっているのか。
状況がなに一つ理解できなかった。
「ちょっと待ってね。すぐイけると思うから」
「くっ、ふ……!」
直後、片足を持ち上げられぐっと身体を貫かれた。
痛みと快感が待ち構えていたように襲いかかってくる。
伊作くんは荒く呼吸しながら前後に身体を動かし、、と時々熱っぽく私の名前を呼んだ。
こんなわけのわからない状況なのに、私にはそれが嬉しく感じてしまう。
無理矢理犯されているはずなのにすごく気持ち良くて、彼の動きに合わせて勝手に腰が揺れる。
「や、伊作く、イ……!」
「イく? いいよっ、イこ、一緒に」
伊作くんは私の耳もとで優しく囁いたあと、ぐっと強く刺激を与えた。
ああ! と高い声が咽喉からあがって、ビクビクと痙攣するように身体が震える。
全身が熱いものに犯されたみたいな快感の中、起き抜けの私は伊作くんの白濁を受け止めた。
状況を整理しよう。
ぐったりと身体がだるく、頭は混乱を極めていた。
私はくの一私はくの一と心の中で繰り返し、なんとか冷静さを取り戻そうとする。
とりあえず、ここは伊作くんの部屋だ。正しくは、伊作くんと食満くんの。
いまここにいるのは伊作くんと私だけ。
そして私は確か、図書室に本を返却しにいき、くの一教室の自室に戻ろうとしていたところだった。
「ちゃん、お水飲む?」
「……うん」
私の混乱を深めているのは伊作くんのこの態度だった。
深く眠っていた女の子を犯したとは思えないほど、いつも通りに優しい。
受け取った水はするりと咽喉を流れていった。まだ火照る身体に染み渡る。
「伊作くん。説明してもらっていい?」
「いいよ」
記憶はどうしても帰ろうとしていた、のところで途切れる。
自分で倒れたのか、誰かのせいで倒れたのか知れないけれど、私をここまで運んだのは彼のはずだ。
全てを知っているはずの彼に聞くのが一番手っ取り早い。伊作くんはにこにこして頷いた。
「ぼく、新しい薬を作ったんだ。強力な眠り薬でね。薬を作ったら、まずは効果を確かめるだろう?」
私は黙して頷いた。ここまででもう、大体話はわかってしまった。
「私を実験台にしたのね」
「うん。勝手にごめんね。でも媚薬の効果も含めていたから、どうせ試すなら好きな女の子がいいでしょ」
思考がまた止まった。媚薬? 好きな女の子?
伊作くんは照れていた。顔を赤くして少し俯く。先に犯しておいてなんだ、それは。
「だからきみのことをつけた。一人なったところを狙って、薬を嗅いでもらった」
そういえば気を失う直前、妙にいい香りがした。身体中の力が抜けるくらい、リラックスしたんだと思う。
「それからきみをここに運んだ」
「食満くんは?」
「委員会の仕事でね、備品の修繕で今日は徹夜なんだ」
なるほど、用具委員長の彼は一晩帰って来ない。女の子も連れ込めた、というわけだ。
なんだかすごく計画的な犯行のような気がしてきた……。
時々言われていたことだが、伊作くんは優しいだけじゃなく、したたかな一面も持っていた。
「きみはすごくかわいかったよ。媚薬の効果が強すぎたみたいで、眠りながら自分の身体を触っちゃったりね」
「うそ……」
「ほんと。ぼくの薬のせいだから、責任持って楽にしてあげようと思って」
言葉も出なかった。恥じるべきなのか、怒るべきなのか、泣くべきなのか、それすらもわからない。
ただ勝手にこんなことをされたのに、伊作くんを怖いとも嫌いだとも思えないのは確かだった。
「きみの反応はすごく良かったし、かわいい声もたくさん聞けた。挿れてる最中に目が覚めちゃったのは想定外だったんだけど」
「……」
「おかげで薬の効果はしっかり確かめられたよ。協力ありがとう」
なんだろう、すごいことをされたはずなのに、そう笑顔で言われるとどういたしまして、としか言えなくなる。
それで聞いて欲しいんだけど、と伊作くんは急に恥ずかしそうにもじもじし始めた。
これ以上恥ずかしいことがあるんだろうか。
「ちゃん、ぼく、きみのことが好きなんだ。その、恋人になってくれないかな」
伊作くん。順番、間違ってるよ……。
犯すときはあっけらかんとしていたくせに、告白でこんなに恥ずかしがるなんて、伊作くんの感覚はどこかずれている。
呆れたけれど、そんな彼がかわいいな、と思ってしまう私も大概だ。
「うん。私も伊作くんのことが好きみたい」
「え……! ほんとに?」
伊作くんは信じられない、と驚いた顔をしたけれど、私が頷くと本当に嬉しそうに笑った。
嬉しいな、ありがとう、熱っぽい息を吐くようにそんな言葉があふれてくるみたいだった。
「ね、ちゃん。キスしてもいいかな?」
「ふふ、いいよ」
今度はちゃんと許可を取る伊作くんが可笑しい。
私の思っていることに気づいたのだろう、彼は「キスはちゃんと両想いになってからしたかったんだ」とロマンティックなんだかそうじゃないんだかわからないことを言った。
私の身体に触りはしたけれど、唇は一切つけていなかったらしい。まったく、変なところで律儀だ。
「ちゃん。大好きだよ」
私も大好きだよ、そう返した唇がそっと塞がれる。
やわらかな愛だな、思った途端、耳に触れる言葉。
「もういっかい、しよう」
夜はまだまだ長そうだ。
Good morning,I love you. 09.2.10