濡らしたのそこにゆっくりと先端を触れさせる。
は身体を震えさせながら潤んだ瞳をぎゅっと閉じた。

「いくで」
「ちょっと待って、財前。やっぱり怖いよ……!」
「今更何言うとんのや。痛くせんから黙っとけ」
「ま、待っててば、初めてなんだから、もっと心の準備を……」
「そっちがして欲しい、ってねだったんやろ。ほな自分でしてみるか?」

震える声で懇願されるとつい意地悪を言いたくなる。
まー自分でするわけないやろから(ちょっと見てみたい気もするけど)、その間にもあてがったものの角度を確かめていた。
これならええやろ。俺はいつでもいけるで。

「覚悟決めや。悪いようにはせーへん」
「わ、わかった……。お願い、財前」
「ああ、せやけどもうちょい力抜きや」
「う、うん……」

硬くなっているにそっと言ってやると、吐き出された熱い息と一緒に少し力が抜けたようだった。
もう一度位置と角度を確かめて、あとは黙って一気に貫く。

「つッ!」

が小さく悲鳴をあげたが、痛みは一瞬のはずだ。
手をゆるめると、の耳たぶにファーストピアスがきちんとセットされている。
上手くいったみたいやな。当然やけど。

「終わったで」

声を掛けてやると、まだキツく閉じていたの目が恐る恐る開かれる。
ピアッシングされた自分の耳にそっと指を触れてから長い息を吐いた。

「……ほんとだ。ピアスついてる」

さっきまであんなに怖がっていたのに、今度はすごいすごい、と無邪気に感動し始める。
世話の焼けるやっちゃな。まーたまには人のピアスを開けるのも悪くない。しかもやし。

「左も開けるんやろ」
「うん。左右三つずつ!」
「……は? 何言っとんねん」

ボケかと思ったら、どうやら素らしい。
俺の耳を指して唇を尖らせてくる。

「だって、財前は五つでしょ。だったら私は六つにしようかなって」
「アホちゃうか。なに張り合っとんねん」

軽くチョップするとが上目遣いで「だめ?」と聞いてきた。
ピアスを開けて欲しい、と頼まれたときは驚いたけれど、俺には願ってもない役得だった。
話があるんだけど、と改まってた様子で話しかけられたから告られるのかと期待してしまったけれど。

「一個でも怖がっとったのに無理すんなや。両耳一個ずつにしとけ。またいつでも開けてやるから」
「……うん、わかった!」

は嬉しそうに笑って頷いた。……参るわ、その表情。

「ありがとね、財前」
「……別に、こんくらい」

なんや照れるから、左耳は待ったなしで開けてやろうか。
さっきの反応もエロくて良かったけど。
なんにしろ、好きな女のピアスを開けるっていう行為はやけに扇状的だ。
白石部長的にいえばエクスタシーってとこやろか。
……あかん、なんや毒されとるな、俺も。

「ほな、もう一発やるか」
「う、うん。よろしくお願いします」

軽く目を伏せて髪を耳にかけ、が左耳を俺に差し出す。
その仕草にどくんと心臓が鳴った。
の耳をピアッサーで貫いたときの感触を、震える身体と一瞬の悲鳴を、急に生々しく思い出す。
早くもう一度俺の手で穴を開けてやりたくてたまらなかった。


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