、今日CD屋寄ってくで」
「あぁ、新曲の発売日なんやっけ?」
「発売日は明日。今日フラゲできるんや。行くで」

光に急かされて慌てて後をついていく。
楽しみにしてたんだろうなぁ。随分ソワソワしてるみたい。
幼馴染の光とはテニス部がオフの月曜日に一緒に帰るのが習慣だった。
映画館やらCDショップやらに寄って帰ることが多いけれど、大体光の行きたい場所に付いていく感じだ。
私にはこれといった趣味がないけれど、光の好きなものを気に入ることが多いので光と色々な所に行くのは楽しい。
それ以前に、光と一緒にいるのは当たり前のようなものなのだけれど。

さん」

光と廊下を早足で歩いていたら、不意に違うクラスの男の子に呼び止められた。
同じ委員会でたまに話をする岩国くんだ。
岩国くんは少し目を細めて光を見た後、私に向き直った。

「聞いて欲しいことがあるんやけど、時間ええかな?」
「あ、えっと……」

なにか委員会のことで話があるのかもしれない。
でも今日は光が急いでいるし、明日でも大丈夫かな。
光の方を見ながらそんなことを考えていると、光が私を振り向いて言ってくれた。

「ほな、俺校門で待っとるわ」
「ええの?」
「ああ。すぐ済むやろうし」

ちらり、と光は彼の方に視線を向ける。
あれ? 光は何の用事か知ってるのかな。
光と岩国くんって友達だったっけ。

「……。なあ、さんと財前って、付き合っとらんのやろ?」
「付き合っとらんけど」

岩国くんの問いには面倒臭そうに光が答えた。
ほなまた後でな、と私に言い置いてさっさと行ってしまう。
その背中をちょっとだけ見送ってから、なんだか呆然としているようにも見える岩国くんに声を掛ける。
せっかく光が待っててくれてるし、なるべく急がないと。

「岩国くん、話ってなに? 委員会のこと?」

けれど彼の口から聞かされたのは、予想もしない言葉だった。



校門の前に立ってからウォークマンが三曲も再生しないうちに、は戻ってきた。

「やっぱ早かったな。ほな行くで」
「……光は、岩国くんが何言うつもりか知ってたん?」

歩き始めながら、は俯いて少し気落ちした様子で聞いてくる。
俺が人づてに聞いて知っていたのは岩国がのことを好きだということと、近々告白するつもりらしいということだった。

「告られたんやろ」
「やっぱり知ってたんや! ……結果とか、聞かないの?」

聞かなくてもわかるから聞くつもりはなかったが、は聞いて欲しいんやろか。
……まぁ、めんどいから結論だけでええか。

「振ったんやろ」
「な、なんでわかるん!?」

なんでそんなに驚くのか、俺にはそっちの方が不思議だった。
は告ってきたのが岩国じゃなくても、もし学校一モテるやつでも振っていただろう。そんな相手がに惚れるのかは知らんけど。

「お前、岩国に告られたとき何考えとった?」
「え? えっと……光が待ってるから、早う返事しないと、って」

やっぱりな。
予想した答えとあまりにそのままだったので、思わずの頭をぽんと撫でるようにたたく。

「アホやなー、ホンマ」
「なにそれ! せっかく先生に怒られながら走ってきたのに!」

対抗して俺の頭をはたこうとするの手を軽々受け止めながら、ほんまアホやな、と改めて思う。
あかん、なんか笑けてきたわ。

「ちょっと光、なに爆笑しとんの!?」
「……すまん、ツボにハマったわ。まーなんや、はそのまんまでええで」

ひとしきり笑ってからやっとそう返すと、はすっかりふてくされた顔をしていた。
そしておもむろにこんなことを言い出す。

「やっぱり彼氏、作ろうかなぁ。岩国くんええ人やし、好きになれるかも」
「……そしたら俺らのコンビも解消やな」

幼馴染だからって週一でデートまがいのことをしていたら彼氏もいい気分はしないだろう。
夜もちょくちょく会ってるし、電話やメールも頻繁だ。
が問いつめられる様が(とりあえず岩国を相手として)ありありと目に浮かんでくる。

「……無理やわ。光のおらん生活なんて考えられへん」
「せやろ。わかったらスピード上げてCD屋行くで」
「せやった! 急ごう、光! スピードスターや!」
「アホか」

先に走ったが見慣れた笑顔で振り返る。
ほんまにアホみたいな話やけど、俺にものおらん人生なんて考えられなかった。


校門前で待ってる  にやり
11.4.2