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三年のクラス表が配られた瞬間、俺は真っ先にその名前を探した。
もちろん速攻で発見した。
けれど自分の名前がいくら探しても見当たらない。
「忍足くん、クラス離れちゃったね」
「あ、あぁ。そうみたいやな」
ついそう返事をしてしまってから、改めてクラス表を見る。
いくら彼女のクラスを探しても見つからない訳だ。
俺の名前は彼女とは離れた2組のところにあった。
「残念だなー。忍足くんの隣、楽しかったよ」
「ん、あぁ、俺も楽しかったで」
楽しかった、なんてもんじゃない。
最後の席替えで隣の席になったさんは一緒にいると異様に居心地がよくて、早い話が俺は惚れていた。
三年でも同じクラスになれるよう毎日祈っていたが、どうやら効かなかったらしい。
……祈る相手が韋駄天っちゅーのが間違いやったんやろか。
足の速いもん同士のよしみで叶えてくれるかと思ったんやけど。
クラスはざわついていて、女子の「やばい白石くんと同じクラスだ!」なんて歓喜の叫びも聞こえてくる。
やっぱ人気もんやな、と思いながらクラス表に目を落とすと、俺もあいつと同じクラスだった。
……白石とさんが同じクラスじゃなかったのは良かったかもしれへんな。
あいつが彼女を好きになったり、彼女が白石を好きになったりしたら敵わんわ。
「テニスの試合観に行くね」
「ほんまか? 期待しとるで」
彼女の言葉を心底嬉しく思いながら、内心焦り出す。
もう終業式も終わって、席を立ったら彼女とは離れ離れだ。
別にまだ卒業する訳ではないけれど、クラスが変わったら接点もぐっと減るだろう。
せいぜい廊下やらで偶然出会う程度で、毎日当たり前に言っていた「おはよう」なんてことすら簡単には言い合えなくなる。
「……さん!」
「は、はいっ」
そう思ったら彼女を呼ぶ声も必死になっていた。
さんが少し驚きながら返事をする。
やばい、心臓がえらいどきどきいっとる。
でも、ここで言えへんかったら男やないやろ。
「アドレス、交換せぇへん?」
好きや、と告白してしまおうかとも思ったが、さすがに無理だった。
これでもかなり精一杯で、断られたらどうしようと気が気じゃない。
頼む、韋駄天!
「うん、交換しよう」
さすが韋駄天や、今度は速攻でご利益があった。こっからは自力で頑張るさかい。
頷いて微笑む彼女が本当にかわいかった。