「これも、これも。これも手繋いでるよ」
「ほんまやな」

披露宴で使う写真を選ぼうと、アルバムを引っ張り出したはいいけれど、すっかり兄と見入ってしまっていた。
幼い頃の私たちは家でも遊ぶときも迷子になるときも一緒で、片時もそばを離れなかった。

「あ、謙也くん」
「なんや恨めしい顔しとるな」

昔の写真にはいとこの謙也くんもよく出てきた。
とはいうものの、相変わらず兄と私は二人で手を繋いでいる。
謙也くんは寂しかったのだろう、大抵不満げな顔をしていた。

「仕方ないかぁ。もう手を繋いでるのでいこう」
「そんなんでええんか? チューしとるのもあるで」

確かにお互いほっぺにチューしているものもちらほらあった。
それを見ているとむくむくと昔の記憶が蘇ってくる。

「恋人ごっこ」

同じことを考えていたのだろう、兄が呟くようにそう言った。
幼かった私たちの、可愛らしくも危険な遊び。

「そういえばあの遊び、まだ終わってへんやないか」
「え?」

何を言い出すのかと兄に視線を向ける。
今は伊達眼鏡を外している切れ長の瞳もこっちを見つめていた。

「……結局、浮気相手の方に本気になってもうたか」
「もう、浮気相手って……」

確かに私たちの遊びを中心にすれば、結婚相手の方が浮気相手になるのだろう。
なんだか可笑しくなって笑ってしまったが、兄は真剣な顔で続けた。

「遊びは終いや。……別れよう、
「……侑士」

一つ違いの兄のことを侑士と呼ぶのは、それこそ恋人ごっこの名残だった。

「結婚おめでとう。末長く幸せにな。俺はいつでも、お前の幸せを願っとるで」

いやだ、急に真面目に、そんなことを言わないで欲しい。
関東に越して十数年が経った。
関西弁の揺らがない兄と違い、私は言葉も標準語に染まってしまった。
色々なことが変わっていったけれど、でも、侑士が兄であることは私が結婚しても、ずっと変わらないのだ。

「これからもよろしく。頼りにしてるよ、お兄ちゃん」

アルバムの中、小さな私たちが手を繋ぎながら笑顔で私たちを見つめている。
侑士は覚えているだろうか。
もうずっと昔、幼かった私と彼は、押し入れに隠れてこっそりとファーストキスを交わしていた。


映画タイトルで100の挑戦(フランス映画編)  012:禁じられた遊び
映画タイトルで100の挑戦
11.11.21