「おかえり、」
「ただいま」
チャイムを鳴らすとそこで待っていたのかと思うくらいすぐに、蔵ノ介が出迎えてくれた。
同棲を始めてからの私たちのルールの一つ、帰って来たときは鍵を使わずにまずチャイムを鳴らすこと。
そして先に帰っていた方は、扉を開けて出迎える。
今日のできごとなんかを話しながら、蔵ノ介の用意してくれていた夜ご飯を食べる。
グリーンパスタにプロシュートサラダにミネストローネ。
蔵ノ介が作ってくれるときはイタリアンが多かった。
彼はもちろん、料理の腕も完璧で、いつも私の舌を喜ばせる。
けれどチーズリゾットは私の方が得意だ。
……なんて、彼が「のチーズリゾットは世界一や」って言ってくれるからそういうことにしているのだけれど。
「デザートにティラミスもあるで」
「ほんと!? やったー!」
「でもまだおあずけや。一緒に風呂入ってからにしような」
「う、うん……」
アパートメントの浴槽はかなり狭い。
その上彼は髪から足の指先まで、私の全身を自分の手で洗いたがる。
何度一緒に入っても猛烈に恥ずかしかった。
もう顔が赤くなるのを自覚して俯く私を蔵ノ介はにこにこと微笑んで見つめている。
「明日は二人とも休みやし、今日はいっぱいしような。ゆっくり寝坊して、起きたらどこかに出掛けるのもええな」
私は観念して顔を上げた。
頬杖をつく左手の指が彼の頬に色っぽく掛かっている。
「ごちそうさま」
彼の目を見つめながら言うと、彼は楽しそうに「いただきます」と言った。