「お、。シクヨロ」
「よろしくね。後ろ、ラッキーだね」
「だな」
席替えのくじを全員引き終わり、ざわざわした空気の中で机ごとがたがたと移動してくると、笑顔の丸井くんが出迎えてくれた。お馴染みのグリーンアップルの香りを漂わせている。
「教科書とか忘れたらよろしくな」
「ふふっ。こちらこそ」
丸井くんとはあまり話したことがなかったけれど、なんだか楽しくなりそうだ。
「見せんでええよ、さん。丸井にはジャッカルが貸してくれるじゃろ」
「仁王」
「仁王くん、席そこなの?」
「あぁ」
通路を挟んで反対のお隣は仁王くんだった。
今回はテニス部に挟まれちゃったなぁ。
テニス部にはファンが多いから、みんなに羨ましがられそうだ。
「余計なこと言うなよ、仁王。わざわざ借りにいくのめんどいだろ」
「あんまりさんに迷惑掛けなさんな」
「わかってるっての」
う、うーん。この二人、仲が良いのかそうでもないのか、よくわからないなぁ。
でもこんな風に言い合えるってことは、やっぱり仲が良いんだろう。
ほら、仁王くんなんてちょっと微笑んでるし。
「、右側には気をつけろよ」
丸井くんがそっと耳打ちしてきた。
顔はすぐに離れたけれど、グリーンアップルの香りがひと際強く残る。
つい右隣に視線を向けると、仁王くんが頬杖をついていた。
「あれ? 仁王くんって左利きじゃなかったっけ」
「ん? あぁ」
彼はなぜか右手でペンを持っていた。
すると彼はにやりと笑って、頬杖をやめた左手を伸ばしてくる。
ぎゅっと、右の手首を掴まれた。
え、えっ!? なに!?
「この通り、左利きじゃよ」
いたずらっぽく、にやりと笑う。
じんと痛むほどの右の手首から、あっという間に顔まで熱くなってしまった。
「だから気をつけろって言ったろぃ」
呆れたような声と一緒に、左の手首も塞がれた。
左側の感触は右より少しやわらかい。
両手首を掴まれたまま、私は左右を交互に見ることしかできなかった。
あぁ、なんだか、とんでもない席に来てしまった!