ドン、ドン、とひと際強く戸を叩く音が聞こえたとき、私は飛びあがって扉に走り寄る。
扉を開く間さえももどかしく感じ、ようやく彼の姿を目にしたときにはそのいつもの冷たい表情に向けて馬鹿みたいな笑顔をこぼしてしまう。

「リヴァイさん」
「……」

彼は私の頭を押しのけるように部屋に入り、放すときにはぐしゃぐしゃと撫でてくれた。

「待ってくださいね。今お茶を……」
「必要無い」

髪を手で整えながらお茶の用意をしようとすると、強く腕を引かれ、いきなり胸をまさぐられる。

「んっ……」

彼は早急に身体を求めてきた。
……次の壁外調査が近いのだろう。
この部屋で食事を摂ったり、ゆっくりしていくこともあるけれど、こうして身体だけを求めてくるときはほとんど調査の前だった。

「リヴァイさん、せめてベッドに……」
「……いや。今日は立ったままやりたい気分だ」
「……!」

彼にそう言われては、私に抵抗する術などなかった。
衣服を脱がされ、触られるがままになるだけだ。

調査の前に私を抱くことは、彼にとってただの儀式のようなものなのかもしれない。
それでも私にとっては最も幸福な時間だった。


「……床に四つん這いはやりすぎたか?」
「知りません!」

今までにしたことのない体位を次々に試した後、彼はやっと満足してくれたようだった。
あぁ、彼が帰ったらまずは床をきれいに拭かないと。
リヴァイさんは潔癖なくせにまったく手伝ってくれそうな気配はない。もう……。

「また来る。次は酒でも用意しておけ」
「……はい! お待ちしています」

頭を下げる私の肩に彼が手を置く。
それはいつもの合図だ。
ゆっくりと顔を上げると、すぐに彼の唇が私の唇に触れた。

「じゃぁな、
「……お気をつけて、リヴァイさん」

彼はフン、と鼻を鳴らし、私の部屋を出て行った。
その背中が見えなくなった瞬間、いつも泣きそうになる。

さよならの前のキスを、私はいつだって最後のつもりでその感触を覚えていようと必死だった。
今じゃいつ壁が破られ、巨人に食われるかわからない。
そして死ぬのはもちろん人類最強と呼ばれるリヴァイさんじゃない。
私だ。

「……だから」

次に会えるまで、私はこの唇の感触を決して忘れない。
いつもの、最後のキスを。


いろいろなキス  15 最後の  12.4.16