誕生日だってのに俺の気分は朝から最悪だった。
携帯握りしめてうとうとしながら日付越えるのを待ってたのにあいつからのメールは来やしねぇ。
朝練のときもいつも通りマネージャーの仕事をしてるだけだし(なんか悔しくて自分から誕生日なんだけどとは言い出せなかった)、一番ムカついたのは仁王先輩とばっか話してることだ!

今日だけじゃねぇ、最近はいっつも仁王先輩とこそこそ話している。
何話してるのか問い詰めても「世間話だよ」って言われるだけだ。
なに考えてんだよ、マジで。は俺の彼女なのに。

いつもは朝練の後一緒に校舎まで戻ってたけど、今日はムカつきすぎてさっさと先に帰ってきちまった。
なんて仁王先輩とよろしくやってりゃいいんだよ!
……ちくしょう、目がぼやけてなんていねぇぞ。

昼休みにが来たりしたけど、俺はとにかく逃げた。
フン、いまさら何の用だよ!
もう今日はぜってぇ顔合わせねぇんだからな。

「なぁ、今日ゲーセン寄って帰ろうぜ。ていうか奢れ! 俺誕生日だし」
「はぁ? 赤也、部活だろ? ていうかさんは?」
「あいつの名前は出すなよ」
「なんだ赤也、振られたのかぁ〜?」

クラスの連中は勝手なことを言って盛り上がりだした。
「よーし今日は赤也の慰め会だ」って誕生日だしっていうかそもそも振られてねぇし!
いや、でもあいつ、マジで仁王先輩と浮気してんのかな……。
ぶんぶんぶんぶんと首を振って嫌な考えを振り払う。

「あぁもう知るか、今日はとことん遊ぶぜ!」

しょうがねーなー付き合ってやるよ、と肩を叩いてくる男どもが今日はやけにありがたい。
なんかまじで振られたみたいになってるけどもう今日は考えるのはやめだやめ!
あいつのことなんて忘れてやる!

「赤也!」

……ってせっかく決意したのに、なんで来るかなぁ。
明日真田副部長に制裁を食らうのを承知でサボりも決め込んだのに、クラスの連中と下駄箱にだらだら来たところでが現れた。

「……行こうぜ」
「お、おい、赤也、いいのかよ?」

姿を見ただけで締めつけられたような胸の痛みなんて知らねぇ、なんて無視だ無視。
ぷいと背を向けて構わず行こうとすると、背中に思い切りなにかが圧し掛かった。

「うおっ!」

前ののめりに倒れそうになりながら、背中に当たる温かくてやわらかい感触を感じた。

「おい、なにす……」

振り返りながら口にした言葉はばちんと両頬を挟まれて変な音となって出て行く。
さらにはその音も口ごとやわらかいもので塞がれた。

「お、おお……」
さん、大胆すぎ……」

俺が状況を飲み込むより早く、周りの連中のざわめきが聞こえてくる。
やわらかいものから解放された俺は、の紅潮した笑顔を目の前に見る。

「お誕生日おめでとう、赤也!」
「……あっのなぁ……」

濡れた唇で告げたを、俺は力いっぱい抱きしめた。

、かわいすぎ!」
「あ、赤也! くるし……」
「おめでとー、赤也ー」
「っていうかなんだよこれ、俺らいらねーじゃん!」
「赤也、今度奢れよー!」
「おう! サンキューお前ら!」

ひとしきりはやし立てた後、空気を読んで帰って行くクラスメイトたちにを抱きながら手を振る。
腕の力を少し緩めると、が髪を直しながら文句を言った。

「もう、仁王先輩に私からキスするって考えてもらったのはいいけど、みんなの前ですることになるとは思わなかったよ」
「え? じゃあ最近仁王先輩とよく話してたのって……」
「相談に乗ってもらってたの、赤也の誕生日のこと」
「なんだ……だったら最初からそう言えよ!」
「言ったらサプライズにならないでしょー!」

なんだよ、俺の嫉妬はなんだったんだっつーの。
……いや、それでもが仁王先輩と仲良く話していたことには変わりない。
なんていうか、内容は関係なく二人でこそこそ話してる、ってこと自体が許せねーんだ。

「今度からは一人で考えろよ。……俺は、お前がくれるものならなんだって嬉しいし」
「赤也……ごめんね、嫌な思いさせて」
「もういいよ。プレゼント、ありがとな。……ほら、部活行くんだろ!」
「うん!」

俺たちはコートまでの短い距離を、手を繋いで歩いた。
キスまで見られてるんだから、もうそれくらい誰に見られても構わない気がした。
俺、今日誕生日だし。は俺のもんだし!
キス以上のもんも欲しいな、と考えたら思わず舌舐めずりしていた。


いろいろなキス  14 私から  11.9.25
赤也お誕生日おめでとう!