、起きろ。朝だぞ」
「ん、んん……もう少し……」

の唇から愛らしく息がもれた。
睡眠を懇願する瞳は閉じられたまま、身じろぎと一緒に少しだけまつげが震える。
添い寝のかたちでの横に寝そべったまま、前髪を撫でるように上げて額にキスした。

「早く起きないと朝食を食べ損ねるぞ」
「んー……うん……」

は夢の中でだけ頷いているようだった。
まったく忍としては失格だが、私の嫁となる彼女をくの一にさせる気はさらさらないので問題ない。
手の甲で頬をなぜてからキスを落とす。あと何回のキスで目覚めるだろうか。

「私は忍たま長屋に戻らねばならないから、早く起きてくれると助かるんだが」
「うん……そうね……、……ん!?」

まだ布団の中でもぞもぞしていたが急にがば、と跳ね起きた。
残念。唇にキスする前に起きてしまったか。

「な、なななな……」
「おはよう、
「うんおはよう、じゃなくてっ、なんで仙蔵がここにいるの!?」

起きぬけのの夜着は胸がきわどく肌蹴ていて、つい目が吸い寄せられる。
だが視線に気づいたは掛け布団で胸元まで覆ってしまった。こういうときだけ鋭いのだから。
私も身を起こすとがずるずる後ろにさがる。どうやら警戒されているらしい。

「心外だな。恋人の部屋を訪ねるのに理由がいるのか?」
「恋人って……昨日からじゃない!」
「いつからでも恋人は恋人だ。私の

壁まで逃げたに迫って足首を捕まえる。

「だ、だってこんな、夜這いみたいな……」
「何を言っている、今は朝だぞ。かわいい恋人の顔を朝一番に見たいと思って何が悪い?」

足首を引いて軽く上に持ち上げ、引き寄せるようにこちらが近づく。

「そういう問題じゃ……」
「それともは夜這いの方が良かったのか? それなら今夜にでも」
「ち、違う違う!」

壁に両手をつければもうを閉じ込めることができた。
真っ赤な顔で寝起きの髪をふるわせるはたまらなくかわいい。これだからイジメたくなってしまうのだ。

「拒絶されるとは悲しいな。昨日私の告白に応えてくれたのは嘘だったのか?」
「そんなことない! 仙蔵が好きよ!」

返ってきた一言は少し不意打ちだった。思わずとくんと胸が高鳴る。
真実、彼女のそばにいると私はどきどきしっぱなしなのだが。
それをに伝えても、きっと「嘘よ」と膨れられるだけだろう。
余裕のある振りをするのも結構大変なのだがね。
実際は恋人同士になれたことが嬉しすぎてこうして会いに忍びこんでしまうくらい、浮かれているのだ。

「わかっているさ、。さて、できればもう少しこうしていたいのだが……」
「は、早く戻った方がいいよ。見つかっちゃったら大変だよ!」
「そうだな。の寝顔も見れたことだし」
「ああ、もう……」

恥ずかしそうに俯くが、私の腕の中にいるので表情を隠そうとしても無駄なことだ。
顎に手をかけ、赤い顔を上向かせる。視線を逸らす間も与えず口づけた。
眠っている顔にキスするのも良いものだが、やはり起きているときが一番だな。
私に触れた唇で仙蔵、と私の名を呼ぶがたまらなく愛しかった。



いろいろなキス  08 朝一番の  09.2.22