「なあさん、俺のこと好きやろ?」
「や、わかんな、あっ……」
「好、き、や、ろ」
「ふっ、あああ! あ、っ……」
「なんやて? よう聞こえへんなあ」
「ん、あっ……き、っ……」
「はっきり言えや、せやないとやめるで?」
「っす……き、す、き、すき!」
「よくできました。せやったらご褒美やらな、なあ」
「ひあ! やっ! あ、……らいしく、……っあああ!」
俺も大好きやで、さん。
「はじめまして。です。よろしくお願いします」
東京からの転校生を教室で一目見たとき、俺は思った。
天使が現れた、と。
早い話が一目惚れや。
俺は何事も基本に忠実に行動を起こす。テニスも、恋愛も。
だから最初はちゃんと挨拶から始めた。
「はじめまして、さん。俺、白石蔵ノ介っちゅーモンや。クラス委員長やから、わからんことあったらなんでも聞いてな」
「白石くん、ね。ありがとう。よろしくね」
信じられるやろか。
ふわっと微笑みかけられた、その笑顔だけで俺はもうエクスタシーを感じた。
俺の天使はこのコしかおらん。
俺に最高のエクスタシーを感じさせてくれるのも、俺の包帯を解けるのも、もうこの先きっと彼女しかおらん。
そこまで自覚したのだからあとはもう行動あるのみだ。
クラス委員長、という立場を利用して校内の案内から始めて、早々にメアドをゲットして、転入生を気遣ってる振りして毎日話しかけて。
もちろんふとした拍子に可愛いな、とか褒めることも忘れない。
チャンスがあれば下心なんてなにもない振りをして触れた。
部活がないときは大阪案内、と称してデートに連れ出すようにして、さんがクラスに溶け込んだ頃には俺たちはもう誰の目から見ても仲が良くなっていた。
さんの印象は最初の頃とちっとも変らず、天使のままだ。
好きだ、という想いばかりが接するごとに募っていった。
さんも少なくとも俺に悪い印象は持っていないはずだ。
たまに女子が冗談(たぶん)で彼女に「白石に近づいたらアカン! 変態がうつるで!」なんて言いよるが、さんは「白石くんはほんとにいい人だよ」と優しく笑って俺をときめかせた。
それを見ていた謙也が「お前、いい人止まりなんちゃう?」なんて不吉なことを言ってきたので、とりあえず軽く首をしめておいた。
ともかく事態は悪い方へは動いていないはずだ。
そんなある日、俺は見てしまった。
「俺、初めて見たときからさんのことが気になってて……その、好きなんだ。付き合ってもらえないかな?」
「え! あの、えっと……」
そいつはいつさんと面識があったんだ、というほど遠いクラスのやつで、さんの戸惑いからしてたぶん彼女は名前も顔も知らなかったんじゃ、と思う。
でも大事なのはそんなことじゃない。
さんが他の男に恋をされて、告白されている、という事実だ。
いてもたってもいられない煮え立つような気持ちになって、実際俺はすぐに動き出していた。
「待ちや」
「し、白石くん……!?」
俺はさんの後ろから近づいて肩を抱くようにした。
彼女がびく、と驚くのを感じたが、今は目の前の敵に集中せなあかん。
「な、なんだよ、白石……!」
「残念ながら彼女は俺が予約済みや。潔く諦めや」
「……! お前らまだ付き合ってない、って……!」
「そういう事実がなくても見てればわかるやろ。俺たちの間に入り込む隙間なんかない、って」
さんを抱く手を肩から腰におろし、もっと引き寄せて、緊張した首筋に鼻を埋めるようにする。
甘いシャンプーの香りが漂ってきて危うくこっちの腰がくだけるところだった。
「っ……、だったらさっさと付き合っとけよ、紛らわしいんだよ!」
なんやあいつ、さんと俺が付き合っとったら最初から手出すつもりはなかったんかい。
そんな軽い気持ちの奴が彼女を好きだなんて、到底許せへんことや。
「あ、あの……白石くん!」
「ん? なんや、さん?」
「その、助けてくれたのはありがたいんだけど、とりあえず手を……」
「ああ、せやったな。悪いな」
相当名残惜しい気持ちでさんの身体から離れる。
さんは真っ赤になってもじもじと俯いていて、たまらなく可愛かった。
「ごめんね、変な冗談言わせちゃって」
「冗談、て?」
「あの、ほら……予約済みだとかなんとか」
「ああ、そのことか」
つい熱くなって本心を言ってしまった。
基本を大事にする俺らしくないが、それもまたさんの魅力のせいだから仕方ない。
……というかあんな風に触れてしまったせいか、たまらなく身体がうずく。
目の前にはさんがいて、俺の心も体も我慢できないほどエクスタシーを求めていた。
「……なあさん」
「ん、なに?」
「俺のこと、嫌い?」
「え!? まさか!」
「なら俺たち、付き合わん?」
「えっ……」
「俺はさんのことが好きや。たまらないくらい大好きや」
さんは真っ赤な顔のまま一歩後ろへよろめいた。
さっきのあいつが呼び出したのは丁度人気のない踊り場で、告白を続けるには絶好のスポットだった。
「あ、あのっ……白石くんのことは、その、ほんとに嫌いじゃなくて……転入したばかりの私に親切にしてくれたこと、すごく感謝してる。でも、その、付き合うとか、そういうことは考えたことなかったから……」
『お前、いい人止まりなんちゃう?』
謙也の不吉な予言が当たっていた、っちゅーわけや。
つまり俺の大好きなさんにとって俺は単に親切なクラスメイト、という印象だったらしい。
ジーザス。それなら初めから、もっと強引に攻めておくんだった。
「さん」
容易く壁に追い詰められたさんを両腕で閉じ込める。
「白石くん……?」
その怯えた表情にすら罪悪感もなくそそられる、早い話が俺はキレていた。
「なら教えたる。俺はただの親切な人間やない。危険な男や」
さんのスカートの下、いつも陽から隠されてひと際白いそこに手を這わせる。
白石くん、と不安げに震えた声がこぼれる唇をさっさと塞ぐと、聞こえるのはすぐに粘膜の触れる音と吐息だけになる。
片手は上へ、さんの発展途上の乳房はでも驚くほどやわらかく、そっと指に吸いついた。
「やっ……やめて白石くん……!」
真っ赤な顔で瞳を潤ませるさんの声が上擦っている。
さっきからキレっぱなしだった理性の回路がまた一本音を立てて千切れた。
下着の上から秘部をなぞるとさんは途端にびく、と暴れ出す。
布越しでもわかるほどそこはもう、濡れていた。
「さん、気持ちええんやろ?」
「あっ……!」
つつ、と秘部の周りを指でなぞりながら耳に言葉をねじ込むとさんは甘い声をあげた。
俺の天使はずいぶんと感度がいいらしい。
高揚と彼女に対する愛しさが限度を知らずに燃えそうなほど高まり続ける。
それから欲望と嗜虐心も。
「なあさん、俺のこと好きやろ?」
上と下の指を動かし続けながら耳元で問うと、さんは俺から逃れようとしているのか、もっと快感を求めているのか、腰を揺らしながら必死に答える。
「や、わかんな、あっ……」
「好、き、や、ろ」
「ふっ、あああ! あ、っ……」
下着の中に指を滑り込ませて直接一本突っ込むと、さんは俺にしがみつきながら高く声をあげた。
たまらなくかわいくて俺の方が焦りそうになるが、まだ彼女の答えを聞けていない。
「なんやて? よう聞こえへんなあ」
「ん、あっ……き、っ……」
「はっきり言えや、せやないとやめるで?」
さんの口から出てくるのはほとんど必死に押し殺した喘ぎ声と息ばかりで、それもいいけれど今一番欲しいのはもっと別のものだ。
ふるふると俯くさんから両手を離すと、快感の真っただ中に放置された彼女は焦ったように顔をあげた。
「っす……き、す、き、すき!」
自分からぎゅっと抱きついてきて何度も「すき」と繰り返す。
彼女のその言葉を聞いて、俺はいままでで最高のエクスタシーを感じていた。
本当なら意識を手放しそうなくらいだったが、彼女のために踏みとどまる。
「……よくできました。せやったらご褒美やらな、なあ」
「ひあ! やっ! ああっ、……らいしく、……っあああ!」
あいにくゴムなんて持ち歩いていなかったので、残念やけど俺のをあげるわけにはいかない。
でも今のさんなら指だけで簡単にイけるだろう。
いっきに二本、すぐにもう一本に増やして中をかき回すと、さんはがくがくと腰を揺らしながら俺の胸の中で絶頂の声をあげた。
その後のフォローはもちろん大変だったが、幸いさんのさっきの気持ちに嘘はないようだった。
「しぬほど恥ずかしいしすごく怒ってるけど、好き」とのお言葉をいただき、俺たちはめでたく恋人同士となった。
もちろん俺はさんのことがしぬほど好きやしすごく好きやし、大好きや。
せやからさんが恋人になってくれたのが最高に嬉しいし、絶対に一生放さへん。
「でも白石くんって結構Sだったんだね……」
「さんは意外と淫乱やったんやなあ」
「……!!」
「冗談やって。堪忍な、怒らんといて」
ちゃんとキスしよ、機嫌をとるわけでもなくそう言うと、さんはちょっとだけ俺を睨んでから目を閉じた。
赤い顔と潤んだ瞳では全然迫力なんかなくて、可愛いなあと思うばかりだ。
このコがほんまに俺のもんになったんやなあ、となんだか実感して心から幸せを感じながら、愛しい彼女にやさしくやさしく口づけた。