「やだやだやだやめて赤也!」
「うるせえ、喚くな! 抵抗してんじゃねえよ!」
「っ!」

赤也のとどめとともに、私の操作しているキャラクターは地に落ちた。
WINNER 1Pの文字がやたらと豪華な演出で躍り出てくる。
あーあ、また負けた。やる気なくなくなった。ていうか赤也には私を勝たせる気が全くない。

「なんかさ、もっとさ、手加減してやろーとか思わない?」
「思わねー。お前とやると一方的に攻撃できるから楽しい」
「ひどい、最低! 理不尽だ! 私はとてもつまらない!」

もともと格闘ゲームなんてなんの興味もなかったのだ。
でも赤也が優しく教えてやるよ、なんていうから一応やってみようかなって気になったのに。
いざ始めてみれば○が攻撃で×が防御で△が必殺技だ、じゃあ始めるぞで速攻ボコられた。
コントローラーを握っている意味すらないくらいにあっという間だった。

「あのな、言っとくけど、相手がお前だから楽しいんだぜ? 先輩とかボコってもつまんねーよ」
「……なんで?」
「お前がやめてえ! とか叫ぶとなんかゾクゾクするから。ははっ」

ははっ、て……。私はあまり、笑えないんだけど……。
なんだか身の危険に悪寒という意味でゾクゾクしてきてしまった。だって私Mじゃないし。

「あっ、わ、私、そろそろ帰ろうかな」
「なんでだよ? もっとゆっくりしてけよ。言ったろ、今日誰もいねーって」

静かにコントローラーを置いて立ち上がったものの、胡坐をかいたままの赤也に手首を掴まれる。
こっちを見上げてにっこり笑う彼、普段ならかわいいと思うはずの笑顔が、うう、とても怖い……。

ゲームに勝ち続けた赤也には既に精神的優位がある。力については言うまでもない。
赤也にも確かに、その、えっちなことについて一般的な興味はあるだろう。
教室で他の男子とグラビア雑誌を囲んで騒いでいたこともあるし。
でも私たちはまだ中学生だ、無意識にそんな安心感を持っていたので、私は何も考えずに「誰もいねー」という赤也の家にのこのこあがったわけだけれど。

「あ、赤也……。じゃあ、もう一度ゲームしよ! 私も負けっぱなしじゃ悔しいし……」
「何回やっても一緒だろ。そんなことより、俺お前とやってみたいことがあるんだけど」
「わっ」

掴まれていた手首を引っ張られ、バランスを保つ暇もなく赤也に向かって倒れ込んだ。
私の身体は赤也がしっかりと抱きとめてくれたけれど、文句を言う前に口が塞がれた。
驚いて呼吸も一緒に止めてしまって、いつもより苦しくなるのが早い。
でも赤也はまだまだ放してくれそうにない。それどころかどんどん深くなっていく。
入ってきた舌を押し返すつもりで自分のも動かしたら、勘違いしたらしい赤也は舌を絡めてきた。

「んっ、んー……!」

苦しい。酸素が足りなくて頭がくらくらしてきた。
一生懸命のどを鳴らす、それでも赤也はやめてくれないので、両手を背中に回して爪を立てた。

「いってぇっ……!」

生存本能のまま思いっきり引っ掻くと、赤也は投げ出すように私を解放して叫んだ。
とにかく空気だ、空気。床に両手をつけて思いっきり呼吸する。
とりあえず、助かった……!
深すぎたキスのせいで唾液が垂れ落ちそうになって、急いで口元を拭った。
それから涙まで流れていることに気づく。これが生理的な涙、というものだろうか。初めての経験だ。

「おい、……!」
「あっ、ごめんね赤也」

もとはといえば死にそうなキスをしてくる赤也のせいなんだけれど、まだあまり余裕のなかった私は荒い息のまま素直に謝った。
無我夢中で引っ掻いてしまったので、もしかしたら服の下に痕がついてしまったかもしれない。

「……いいよ、許す。なんかお前、すっげーやらしい顔してるし」
「えっ……し、してないよ!」
「自分でわかってねえの? 涙と涎でぐっしゃぐしゃ。唇とか超赤いし」
「それは赤也のせいで……」
「俺のおかげ、な。……続き、いいだろ?」

今度はもっと感情的な意味で、息が詰まる。
目を細めて微笑する赤也はいつもと雰囲気が違う。どこかとても、大人っぽい。
息苦しさからくる鼓動はおさまってきたけれど、また波打つように心拍数が上がる。
返事が出来ないでいるうちに、赤也は私の身体を軽々と抱えてベッドの上に移動した。
怖かったし不安だったけど、赤也になら何をされてもいいとその時の私は思っていた。



「やだやだやだやめて赤也!」
「うるせえ、喚くな! 抵抗してんじゃねえよ!」
「っ!」

泣きわめく私にもまだデジャブを感じる余裕だけならあった。
格闘ゲームをしていたときとまったく同じ会話を私たちは繰り返している。
でも今度は状況が違う! これはゲームじゃなくてリアルだ。
ただ赤也にもゲームをしているときみたいな余裕はないようだった。

「痛い痛い痛い無理……!」
「無理とか言うなってッ……!」

結論を言えば、私たちは経験のない子供なのだ。
特に私はAVを見たことのあるらしい赤也と違って知識すら乏しい。
セックスっていうのは女性の身体に男性の性器を挿入するものだ、という一般常識くらい知っている。
でもそれだけだ。とても気持ちの良い行為だ、というのはいわば噂に幻想を見ていたようなものだ。

「もうやだよぉっ……! 痛いってばぁ……!」
「大丈夫だよ、だって濡れてんだから! もっかい……!」

もっかい、ってなんだ、もっかい、って!
私はそうやってさっきから何度も突かれていて、正直この痛みに耐えろと言われても限界がある。
血だって出ているのだ! 処女膜が破れただけだから大丈夫、と赤也はわかったようなことを言っていたが、この痛みまでわかっているはずがない。

「っ……! あ、赤也、お願いだからもう動かないで……!」
「動かないと気持ち良くねえだろ? いくぜっ……!」
「い、いやあーっ! 赤也のばかぁーっ!」

はっきり言って、気持がいいのは赤也だけだろう!
赤也は泣き叫ぶ私の上で、楽しそうに赤い舌を見せながら腰を動かした。
悪魔だ……。
私は赤也が絶頂を迎えるまで、痛みを抱えて泣きわめいているしかなかった。



「なあ、そんなに痛かったのか?」
「赤也には私の泣き叫ぶ声がまったく届いていなかったんだね……。ていうか、まだ痛い」
「悪かったって。ていうか最後の、俺もかなり痛かったんだけど」

私はよく覚えていないけれど、どうやら最後の最後でまた生存本能が働いたらしい。
腰を動かすのに夢中の赤也の背中に思いきり爪を立て、引っ掻いたのだ。
今度は服の上からではなく直接皮膚だったから、相当痛かったらしい。
見てみると赤也の背中には薄い線と濃い線が六本ずつついていた。
抱き合っている中で痛みしか与えられなかった私はそれで少しだけ満足した。
ともあれ私たちはそれぞれの痛みのせいで、まだお互いに涙目だった。

「次はもっとうまくやるから。な!」
「う……。私は当分嫌なんだけど」

無駄にきらきらしている赤也の目から視線を逸らして拒否すると、唇を噛まれた。

「痛っ……! な、なにするのっ……!」
「キョヒんなよ。俺はやだやだ言ってるお前にも感じるから、別に痛いままだっていいんだぜ」
「赤也のばか、そんなの無理やりだよ!」
「だからそうなんないように、練習しよーぜ」

赤也の理屈はあまりに理不尽だった!
服を着る気力もなくて裸のままだったのもよくなかった。
背中の痛みはもう引いたのか、元気になってしまったらしい赤也は早速胸に触れてくる。
絶対無理だ、今もう一度やったら本当に死んでしまう!
私がまた本気で泣きわめくと赤也は冗談だよと身を引いたが、正直疑わしい。

「でもお前の叫び声、癖になりそう」
「……!」

舌舐めずりした赤也に反応してびくりと身体が震える。
それが恐怖からだけだと思ったのだろう、赤也は「嘘だって、怯えんなよ」と優しく撫でてくれた。
実は少し濡れてしまったことは、絶対内緒にしておこう。



ボコ題 08:泣きわめく  ボコ題
08.12.6