「赤也、今年の誕生日プレゼントは何が欲しい?」
「え? あー、そういやもうすぐか。なら新作のゲーム……いや、やっぱいいや。姉ちゃんバイトもしてねーし、金ねえだろ」
「遠慮しないの。そりゃお小遣いから買うことになるけど、私の気持ちなんだから」

姉ちゃんは切原家には珍しくかなり真面目な人間だ。
勉強が大好きで学年一位なんて当たり前、高校の模試ではいつも東大が余裕で合格圏内らしい。
上の姉貴と違ってすげえ優しいけど、勉強しかしてこなかったせいかどっか抜けていて危なっかしい。

俺はそんな姉ちゃんが大好きだったし、絶対に傷つけたくないって思う。
それは俺だけじゃなくて、うちの家族の連中はみんな姉ちゃんを可愛がっていた。

「んじゃ姉ちゃん、その日は俺と遊んでくれよ。部活もちょうど午前だけだし」
「え? 楽しそうだけど、それでいいの? 去年も確かサイゼで奢っただけじゃない」
「いーのいーの。そうだ、せっかくだから外で待ち合わせしよーぜ! 一時に駅前、なっ」
「待ち合わせ? 私はどうせ家にいるから、一回戻ってくれば良いじゃない。荷物もあるんだし」
「いいじゃん、待ち合わせした方が楽しそうで。なんかデートっぽくてさ」
「デ、デートって……。まあ、赤也の誕生日なんだから赤也に合わせるけど」

姉ちゃんはデート、っていう単語に反応して真っ赤になった。
姉ちゃんはもちろん恋愛にも疎いみたいで、その方面でからかってやるとすぐ恥ずかしがるからすげえかわいいと思う。あんまりやりすぎると逃げちまうけど。

「んじゃ約束な! 俺、楽しみにしてるから」
「うん。私も楽しみにしてる」

姉ちゃんはそう言ってふんわり笑った。やっぱり姉ちゃんは我が家の癒しだ。
姉貴に誕生日は姉ちゃんとデートだ、と自慢するとすごい形相で睨まれた。
その日は抜けられないバイトだ、と悔しそうに唸られ、を振りまわすんじゃないよ、と長い爪を突き付けられて脅された。
うちの家族は姉ちゃんのことになると結構見境がなくなる。もちろん俺もだけど。


「赤也、今日は随分機嫌が良いみたいじゃな」
「あれ? そう見えるっスか?」

誕生日当日、練習試合もさくっと終わり、俺はうきうきしながら着替えていた。
もしかしたら自然と鼻歌ももれていたかもしれない。
ちなみに先輩たちも朝から誕生日おめでとう、と声を掛けてくれた。
なぜか今日は持ってきていないらしいけど、プレゼントに合同でテニスボールをくれるそうだ。

「赤也は今日さんとデートだからな」
「ほほう、あの頭の良いお姉さんか」
「柳先輩、なんで知ってるんスか! ……ってもしかして、姉ちゃんから聞いたんスか?」

柳先輩と姉ちゃんはちょっとムカつくけど仲が良い。
姉ちゃんはしょっちゅう論文で学校の賞なんかとっていたから、柳先輩は尊敬していたらしい。
柳先輩に姉ちゃんを紹介して欲しいと言われたときは思わず赤目になりかけたけど、純粋に勉強のことで相談したいことがあるのだ、と頼みこまれて仕方なく引き合せた。
柳先輩からの頼まれ事なんてあれが最初で最後くらいなもんだろうけど、メールや電話で結構やり取りしてるらしい、と知ってからはやっぱり断固として断れば良かったとちょっと後悔した。

「そうだ。というか、もしかしたらそうなんじゃないかと思って俺が聞いてみた。この後すぐに出掛けるならあまりかさばるものは持っていない方が良いだろうからな」

だから今日はプレゼントを持って来なかった、ってわけか。
待てよ、ってことは……。

「仁王先輩も知ってたんじゃないんスか?」
「まあのう」
「……意味わかんねっス」

知っていてわざわざ機嫌が良いみたいじゃな、なんて聞いてきたってことだ。
まあ仁王先輩が意味わかんないのはもとからだし、気にしても仕方ないだろう。

「そういうワケなんで、お先に失礼するっス!」

お疲れ、という声を背中に聞きながら俺はダッシュした。
待ち合わせにはまだ時間があるけど、この学校から移動すると結構ギリギリだ。
姉ちゃんのことだから遅れても怒んないだろうけど、せっかくのデートの時間が短くなるのは嫌だった。

姉ちゃん!」

バスを飛び降りて待ち合わせ場所にダッシュすると、姉ちゃんはやっぱりもう来ていた。

「わりぃ、待った?」
「ううん、大丈夫だよ。一時ぴったりじゃない。お疲れさま、走ってきてくれたんだね」
「へへっ、姉ちゃんのこと待たせらんねえからな」
「ありがとう。遅刻しなかったね、偉い偉い」

姉ちゃんはにこにこ笑って頭を撫でてくる。
せっかくほんとにデートっぽいな、と思っていたのに子ども扱いされてがっかりする。
でも姉ちゃんはオシャレしてきてくれたみたいだ。
勉強一本の姉ちゃんは服とかアクセサリーにも興味がなかったけれど、そこは上の姉貴がせっせと面倒を見て姉ちゃんに似合うものをよくあげていた。
姉ちゃんの持っているものはだから姉貴の見立てがほとんどで、でも実際似合っているものばかりだったからこればっかりは姉貴に感謝しなきゃいけないだろう。

姉ちゃん、とりあえず俺、腹減った」
「そういうと思ってチェックしてきたんだけど、近くのお店でバイキングやってるみたいだから、そこに行かない?」
「お、行く行く!」

今日はあらかじめ、ご飯とかは奢らせてね、と言われていたのでどっかの安いファミレスに入ろうかと思っていたんだけど、バイキングなら遠慮せずに食べても大丈夫だろう。
姉ちゃんも俺のこと考えてきて決めてきてくれたのかな、と思うとテンションが上がる。

「よし、行こうぜ!」
「あ、赤也! 手!」

つい姉ちゃんの手をひっぱって、そのまま握ってしまった。
姉ちゃんは困ったような声をあげたけれど、誕生日なんだし良いだろ、と言うとしょうがないなあ、って笑ってくれた。
久しぶりに触れた姉ちゃんの手はやわらかくて、小さい。
その感触に驚いたけれど、俺も姉ちゃんよりでかくなったんだな、と思うとなんだか嬉しかった。


「あー、食った食った。姉ちゃん、ごち!」

姉ちゃんが探しといてくれたバイキングはどれも料理が美味かった。
もともと少食な姉ちゃんはあまり食べていなかったけれど、その分まで俺が食ったからもとはとれたはずだ。
早々に食べ終わった姉ちゃんににこにこしながら食べているところを見られるのはちょっと恥ずかしかったけど。
デザートのケーキを食べたあとにクリームついてるよ、って口元を拭われたのもどきっとした。
でもあれも子ども扱いだよな、と思うとちょっとへこむ。

「どういたしまして。さて、次はどこに行きたい?」
「ゲーセン! 姉ちゃん全然遊ばないだろ。たまには一緒にゲームでもしようぜ」
「わ、赤也!」

また姉ちゃんの手をひっぱって、ついついはしゃいで走ってしまう。
今日はちょっとヒールのある靴を履いてきた姉ちゃんが躓いてこけそうになって、慌てて抱きとめた。
ちなみに姉ちゃんは靴にだけはこだわっていて、自前だった。これは特にお気に入りだって言ってたな、今日それを履いてきてくれるなんて嬉しいな、と抱きとめてから少しの間に考えていた。

「ありがとう、赤也」
「いや、俺のせいだし! ごめん姉ちゃん、ついはしゃいじまった」
「大丈夫だよ、赤也のおかげで転ばなかったから。でも今日はちゃんと赤也に付き合うから、ゆっくり行こう?」
「あ、ああ。ほんとわりぃ」

姉ちゃんに微笑みかけられて、手をしっかり繋ぎ直す。
抱きとめた姉ちゃんの身体は俺の腕にすっぽり入ってしまうくらいで、俺はちゃんとこの人を守らなきゃな、ってなんだか強く思った。


「おっ、あれかっけえ」
「どれどれ? あのモデルガン?」

俺にはお馴染みのゲーセンだったが、姉ちゃんは物珍しげにきょろきょろしていた。
小さい頃は家族で遊びに来たこともあったけれど、ここ何年か全く足を踏み入れていなかったらしい。
んじゃとりあえず、ってわけでゲーセンを軽くぶらぶらしてたら、UFOキャッチャーの景品に目をひかれた。

「ああ。でもあのでっかいの、難しいんだよなあ」
「あの機械の腕でモデルガンの箱を取ればいいのよね?」
「ん? ああ、そうだけど」

姉ちゃんは俺の横でいきなり機械に小銭を入れ、ボタンを押し始めた。

「あれ、姉ちゃん、UFOキャッチャーやったことあんの?」
「ううん、初めてよ。でも単に腕で箱を掴めばいいんでしょう」

俺は困惑し、まじまじと姉ちゃんを見てしまった。
口で言うのは簡単だけど、多少腕に自信のある俺でもあれは結構難しい。
無駄にお金を使わせることになっちまって悪いな、と心の中で思う。

が。すぐに信じられないことが起こった。
姉ちゃんからガラスケースに視線を戻すと、なんとアームがしっかりとモデルガンの箱を持ち上げていたのだ!

「ま、まじ!? すげえ、一発かよ……」

これがビギナーズラック、ってやつだろうか。
しかし姉ちゃんはきょとんとした顔で俺を見上げていた。

「腕と箱の大きさも、動く位置も見えてるんだから取れて当然じゃない?」

俺はたぶん、かなり間抜けな顔をしてしまったと思う。
姉ちゃんは感覚とかそういうのじゃなく、理詰めで商品を取ってしまったらしい。
そういえばこの人すげえ頭良かったんだ、とのんびりした雰囲気につい忘れていたことを思い出した。

「はい、これ。赤也にプレゼント」
「あ、ありがとな、姉ちゃん」

がこん、と騒がしく落ちてきたモデルガンを受け取る。
なんだかまだびっくりしていた俺は、嬉しかったにも関わらず笑顔を作るのにやけに苦労してしまった。


姉ちゃん、俺ちょっと格ゲーやっても良い?」
「うん、良いよ」
「わりぃ、ちょっとうずうずしちまって。姉ちゃんも一緒にやるか?」
「うーん、よくわからないから、赤也のを見ててもいいかな」
「ああ。俺の技はすげえから、よく見ててくれよ」

ほんとは一緒にやれるので遊ぶつもりだったんだけど、いつものゲーム台を見たら我慢できなくなってしまった。
姉ちゃんはにこにこ笑っていてくれるけど、ここも姉ちゃんの奢りだしほどほどにしないとな、と思う。

最初はCP相手にやっていたが、途中で向かい側に相手が座ったので対戦することにした。
姉ちゃんの前でかっこ悪いところは見せられねえ。
自然といつもより気合いが入る。

「よっしゃ!」
「おお、すごい! 強いね、赤也」

何人か倒したが、俺が勝つたび姉ちゃんは嬉しそうな声で褒めてくれた。
もちろん俺はつい調子に乗ってしまう。
挑戦者も続々と現れるのでなかなか手が止まらない。

「おし、また勝った!」

十何人目かを倒したとき、姉ちゃんの声が聞こえないことに気付いた。

「あれ? 姉ちゃん?」

顔をあげてあたりを見回すが、ギャラリーの中に姉ちゃんの姿はない。
うそだろ、姉ちゃん、どこ行ったんだよ。
俺はすげえ焦った。血の気がひく、ってこういうことか。普段は血がのぼってばかりだからいつもと違う感覚に余計焦る。
俺がずっとひとりで遊んでばっかだから、呆れてどっか行っちまったのかな。
考えた瞬間、泣きそうになってびびったけど、姉ちゃんはそんな奴じゃない。
姉ちゃんがゲーム台の上に積んでおいてくれた百円玉を制服のポケットに突っ込んで、俺はギャラリーをかき分けて走った。


ゲーセンはそんなに広い場所じゃなかったが、全体的に暗めだし色んなゲームのせいで入り組んでいる。
人や機械にぶつかりながら懸命に首を回した。
こうしていると小さなとき俺が迷子になって、一生懸命姉ちゃんを探していたときのことを思い出す。
あのときは姉ちゃんが俺を見つけてくれたけど、今は俺が姉ちゃんを見つけてやらなければ、と無意識のうちに強く思っていた。

姉ちゃん!」

ようやく視界の端に姉ちゃんの姿を捉え、名前を呼びながら駆け寄る。
振り向いた姉ちゃんに安堵するのも束の間、その隣にいる人物に心底驚く。
信じらんねえ。なんでいるんだ?

「柳先輩に仁王先輩!?」

必死に姉ちゃんを探し、今度は別の意味で驚愕している俺に、姉ちゃんは赤也、とのんびりした声で話しかけてきた。

「どういうことだよ、なんで先輩たちがここにいんの? ていうか姉ちゃん、どこ行ってたんだよ」
「ごめんね赤也、ちょっとお手洗いに行きたくなっちゃって。赤也は集中してたから声掛けない方が良いかな、って黙って行っちゃったの」
「そうだったのかよ。別に声掛けてくれて良かったのに。つーか掛けてくれ、姉ちゃんいなくなっててマジでびびったし」
「ほんとごめんね。それで、えっと、帰りに変な人に絡まれちゃって」
「は!?」

変な人に絡まれた? 俺はまた心臓がびくっとするのを感じる。
マジでダメだ、姉ちゃんから目を離しちゃダメだ、と一秒の間に百回くらい反省した。

さんがナンパされてたから、偶然通りかかった俺と柳で助けに入ったナリ」

仁王先輩がいきなり口を挟んできた。
つーかなんだ、さんって。仁王先輩と姉ちゃんは面識ないだろ、今日が初対面だろ!

「ていうか偶然、ってなんスか、偶然て」
「偶然は偶然だ。なあ、柳」
「あ、ああ。偶然だ」

この人たち、絶対偶然じゃねえし。
大体柳先輩がゲーセンなんてありえねえ。
どうせ俺が姉ちゃんを連れてゲーセンに寄る確率は95%だ、とか考えてやって来たんだろう。
仁王先輩も部活のとき俺のことからかってきたし、面白がって付いてきたとしか考えられねえ。
ていうか柳先輩、やっぱり姉ちゃんのこと狙ってやがった! なにが純粋な勉強の相談だ! 紹介したときからなんか嫌な予感がしたんだよな……。

「本当にありがとうございました、二人とも」

姉ちゃんがそんなことを知るはずもなく、丁寧に頭を下げている。
俺は先輩たちを睨んでいたけれど、気にしないでください、と姉ちゃんに声をかける柳先輩は気付いてもいない。仁王先輩はにやにやしながらこっち見てるし!

「あー、もう! 行こうぜ、姉ちゃん!」

姉ちゃんの手をぐいぐい引っ張る。
姉ちゃんを助けてくれたことには感謝するけど、これ以上姉ちゃんと先輩たちを一緒にしておきたくなかった。

「わ、ちょっと待って、赤也! 蓮二くん雅治くん、ほんとにありがとね!」

!? なんで名前で呼んでんだ!?
柳先輩は一万歩譲ってともかくとして、仁王先輩まで!
またお会いしましょう、とほざいている先輩たちに問いただしたかったが、今は二人から姉ちゃんを引き離すのが先決だ。
くっそー、先輩たち、次の部活は覚悟してろよ!

もとの格ゲーのあたりまで戻ると、もう人は散っていた。
一応もと来た道を振りかえるが先輩たちの姿はなく、ほっとする。

「赤也、今日はゆっくり行こう、って言ったじゃない」

手を繋いだままの姉ちゃんは少し息を切らしていた。

「あ、わりぃ。でも姉ちゃんが俺のこと放って先輩たちと居るから」
「あのコたちは助けてくれたんだよ? それに赤也、ゲームに夢中だったから……」

確かにもとはと言えば、姉ちゃんを置いてひとりで遊んでいたのは俺だ。
姉ちゃんが変なやつに絡まれることになったのもそのせいだといえばそのせいだし、俺はちょっと反省した。

「ごめん、姉ちゃん。次は二人で遊べるゲームやろうぜ」
「あ、じゃあ赤也、プリクラ撮ろう?」
「え!?」
「やっぱり恥ずかしいかな。ごめんね、嫌だったら別に良いんだ」
「や、恥ずかしいっつーか、恥ずかしいけど、でも全然嫌じゃねーから! よし、撮ろうぜ!」

姉ちゃんとプリクラ。なんかそれって、すげえ魅力的だ!
繋いだままだった手を、今度はプリクラのブースに向かって引っ張る。
なんだかたくさん種類があって、俺も姉ちゃんもさっぱりだったけど、前丸井先輩たちとふざけて撮った機種があったからそれにした。

姉ちゃん、もっと寄んねえと映んねえって」
「う、うん。……って、うわ! もう撮れてるの?」
「撮ってる撮ってる! ほら、笑って!」

プリクラに慣れていない俺たちは失敗ばかりだったけど、ちゃんと撮れてるのも少しはあった。
はにかむように笑う姉ちゃんがすげえかわいくって、むちゃくちゃ嬉しくなる。
ラクガキのときも慣れない手つきで「Happy Birthday,AKAYA」って書いてくれたりして、ちょっと線が曲がってるところなんかも愛しかった。

「お、出てきた出てきた。俺、携帯に貼ろーっと!」
「えっ、携帯に?」
「へへ、先輩たちにも自慢してやるんだ」
「自慢にはならないと思うけど……。でもお礼言っといてね。プリクラでも一緒に撮ってやったら赤也が喜ぶぞ、って教えてくれたの蓮二くんたちだから」
「へ? マジで?」

なんだ、先輩たち、たまにいはいいこと言ってくれんじゃん。
偶然とか言ってここに来たことも、それなら少しは許してやろうって気になる。
姉ちゃんも自分の携帯にプリクラを貼ってくれた。
お揃いだね、って嬉しそうに笑うのがすげえかわいかった。


「今日は私も楽しんじゃったな。ありがとう、赤也」
「それ俺のセリフだし。今日は付き合ってくれてありがとうな、姉ちゃん。なあ、またこうやって遊ぼうな」
「うん。そうねえ、今度は私にも付き合ってもらおうかな。図書館でがっつりお勉強とか」
「げ……、それだけはマジ勘弁」

姉ちゃんは教え方もうまいし、俺も勉強しなきゃいけないなら姉ちゃんと一緒がいい。
でもがっつりは無理だ! 断固として!

「あはは、冗談よ。ほどほどにするわ」
「勉強はする気なんだな……」

俺には絶対に理解できないけど、俺にとってのゲームが姉ちゃんにとっての勉強みたいなもんなんだろう。
姉ちゃんが望むならそれも仕方ないかな、と俺は思う。
結局のところ、姉ちゃんと一緒にいられれば何でも良いのかもしれない。

「お誕生日おめでとう、赤也。赤也が私の弟で良かった。……生まれてきてくれてありがとう。大好きだよ」
姉ちゃん……。ああ、ありがとう。俺も姉ちゃんの弟でマジで幸せだ」

家に帰れば親がケーキとご馳走を用意してくれているだろう。
姉貴からは何が送られて来るかちょっと怖いけど、姉ちゃんと撮ったプリクラを見せてやろう。
きっと用意したプレゼントを壊しかねない勢いで悔しがるに違いない。

手を繋いで歩いた帰り道、家に入る直前で俺はそっと姉ちゃんを抱きよせる。
姉ちゃんはちょっと戸惑ったけれど、ぽんぽん、とあやすように背中を撫でてくれた。
子ども扱いもしょうがない、と今は受け入れられる気分になる。
だって俺は、姉ちゃんの大切な弟なんだから。

「大好きだ、姉ちゃん」

俺は世界で一番、姉ちゃんのことが大好きだ。


姉弟 12題  6.たまには一緒にゲームでも  3 lies
09.8.5